ワーキングメモリの日常生活での働き

ワーキングメモリ 

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ワーキングメモリとは、脳の前頭前野の働きのひとつで、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力のことです。日常生活のさまざまな場面で、ワーキングメモリは働いています。ワーキングメモリが日常生活でどのような働きをしているかをわかりやすく説明していきます。

生まれてから死ぬまで働くワーキングメモリ

あなたの脳のワーキングメモリは、日々、嵐のように押し寄せる情報を整理しています。メールや、なり続ける電話、めまぐるしく変わるスケジュール。数学の新たな課題に取り組んだり、友達のFacebookやTwitterなどのSNSの投稿を見て、落ち込んだり、仕事でのプレゼンの準備に追われたり。こうした情報の渦中にあり、どれも同じくらい重要な物事に思えるとき、あなたのワーキングメモリは、主にふたつの機能をはたしています。

  • 優先順位をつけてから、情報を処理する。(関係のないものは無視して、必要な情報から処理できるようにする。)
  • 情報を利用して作業ができるように保管をする。

日常生活でのワーキングメモリの働き

ワーキングメモリは、この世に生まれた瞬間から死ぬまで、日々の生活で重要な役割をしています。日常生活で働きを、いくつかの例をあげて説明していきます。

情報に優先順位をつける

強いワーキングメモリは、メール、文章、Facebook、Twitter、留守番電話など、日々の生活に押し寄せよせる情報を管理するうえで役立ちます。ワーキングメモリが機能するからこそ、こうした情報を処理し、作業に優先順位をつけることができます。そのワーキングメモリの働きで、あなたは最も重要なものから順番に物事を片づけながら、これはあとで対処しようと頭の中でメモをとったり、不要な情報をゴミ箱に捨てたりすることができます。

重要な物事に集中する

日常生活には、気を散らせるものが満ち溢れています。ワーキングメモリがそうした余計なものをふるいにかけることで、目の前にある最も重要な作業に集中することができます。例えば、夫婦ともに仕事の締切間近で、そんなときに限って、保育園が夏休みでやんちゃなふたりの子どもの世話もしなくてはいけない。そんなとき、夫婦で順番に子どもの世話をする当番表をつくり、交代で仕事に専念する時間をつくり、その時間は仕事に集中することで、どちらも仕事を締切に間に合わせることができました。ワーキングメモリを活用しているから、この時間は仕事に集中するべきと判断できたのです。

物事をすばやく考える

あなたはいま、就職活動中で、憧れの会社の面接にまでこぎつけたとします。あなたは事前に、その企業の理念やライバル会社の情報などについて下調べをして、万全の準備を整えています。ところが、いざ面接では、面接官から突飛な質問を投げかけられました。「有料駐車場がある工業団地で、お客と会うことになりました。あなたは、駐車場のどこに車を止めますか?」あなたは「は?」と面食らいます。そのときに、即座にワーキングメモリが最近の記憶を思い出す。そういえば、さっき面接官が自分の車はあれだと指を指していた(出口に近いところに前方駐車)。そして、あなたは面接官が車を止めているあたりが正解なのだろうと推測し、「駐車場の出口のすぐそばに停めます」と答える。これで、内定に一歩近づくことでしょう。

賢くリスクを冒す

基本的な情報がまったく与えられないまま、リスクの伴う投機的事業に投資すべきかどうかを判断するとき、脇目もふらずに猪突猛進したり、勢いに流されたりしないように、ワーキングメモリがあなたを踏みとどまらせる力になります。例えば、Facebookが新規株式公開をした直後に株価が暴落したとき、あなたはワーキングメモリを活用し、所有する株式をこのまま保有するか、投げ売りをするかの判断をします。

勉強をスムーズに進める

子どもは教室に足を踏み入れるたびにワーキングメモリを活用しています。ワーキングメモリは、すぐそばから聞こえるクラスの子のひそひそ話など気を散らせる情報を遮断し、段階を踏んで進めなければいけない作業に集中させます。そして、数字や単語など、必要な情報にアクセスできるようにします。そのうえで、それらの情報を意識の所定位置に置いたまま、できるだけ早く作業を終わらせるのです。

個人的な判断をくだす

好きか嫌いを判断するときや、必要に応じた判断をするときにも、ワーキングメモリが深く関わっています。出会った相手が魅力的かどうかを判断する際にも、ワーキングメモリは欠かせません。そう聞くと、あなたは意外に思うかもしれませんが、例えば、BARでだれかに目をとめたとき、あなたのワーキングメモリは長期記憶に保存されている「素敵な人」に関する参考文献をパラパラとめくる。そして、頭の中にある「素敵な人」のイメージと目の前にいる人物とを比べ、決断をくだします。声をかけようか、やめようかと。それ以外にも、いま観ているホラー映画が好きかどうかを決める際にも、同じプロセスを経ます。スクリーンに映るこのモンスターは、長期記憶に保存されている他のモンスターと同じくらい魅力的なのかと。

また、状況に応じた行動をとるときも、ワーキングメモリは機能してます。例えば、交通事故を起こし、相手の車から血相を変えた運転手が飛び出してきた場合、あなたのワーキングメモリはすばやく作動し、車外にでるべきか、あるいは車のドアをロックしたまま通報するべきか、長期記憶に保存されているさまざまなシナリオを瞬時に検索して、判断をくだすのです。

新しい環境への適応

転職したリ、解雇されたり、離婚したリ、引っ越したりする人の中には、新たな環境にすぐ慣れ、前向きに頑張る人と、新たな環境になかなかなじめずに苦労する人がいるのは、どうしてだろうと疑問に思ったことはないですか?解雇されてもすぐに気持ちを切り替え新たな仕事に取り組んだり、長い結婚生活に終止符を打ったあとすぐに新たな出会いを求めたり、新居での一人暮らしを楽しんだりする際に必要となるのが、強い機能をもつワーキングメモリです。というのも、ワーキングメモリは、あたなが古い考え方から新しい考え方へとスムーズに移行できるようにし、以前とは違う観点から物事を眺められるようにしているからです。

モチベーションの維持・長期目標の達成

あなたは志のある大学生とします。大手弁護士事務所で弁護士としてのキャリアをスタートさせたいと考えています。法科大学院適性試験のいいところは、きちんと勉強すれば高得点を獲得できること。だから、あなたは猛勉強を重ね、試験で高得点を叩きだし、最高の法科大学院に入学し、一流事務所に就職しよと決心。ワーキングメモリのおかげで、あなたは、この目標を常に念頭に置き、飲み会に参加する友人から一緒に行こうと誘われても誘惑に負けず、コツコツと勉強を続けるこができた。ワーキングメモリが機能したからこそ、友人の誘いにNOと言うことができるのです。

ポジティブでいられる

ワーキングメモリは、現状にふさわしい感情とふさわしくない感情を整理します。また、恐怖や不安といった感情を生ずる、脳のもっとも原始的な部位である偏桃体から送られてきた信号や意味を解釈し、ポジティブな考え方に集中できるようにします。2010年にチリの鉱山落盤事故で69日後に救出されらた30人の作業員。気の滅入る地下生活で将来だけを見つめ、陽気に過ごすことができたのもワーキングメモリが活用されたからです。

自分のモラルに従う

ワーキングメモリは、仕事や恋愛、社交の場であなたが正しいことをするうえで役に立ちます。たとえ、自分のまわりにいる他の人たちが道からはずれてしまっても、自分は誠実を貫くときに力となります。ある研究によると、ワーキングメモリは恋愛においても自分をコントロールするそうです。強靭なワーキングメモリをもつ人は、自分たちの恋愛関係の目標を常に忘れず、その脅威となる事件が起こっても、とにかく自分たちの関係を守ろうとします。出張先で魅惑的な同僚が誘いをかけてきたとしてもです。その反対に、ワーキングメモリが弱い人は、こうした誘惑に負けやすいのです。

優れたスポーツ選手になる

強力なワーキングメモリが、あなたの最高のパートナーになりうる瞬間があります。例えば、あなたがテニス選手だったとします。相手が打ったテニスボールがネットを超え、あなたの目の前でバウンド。さて、あなたはどんなショットを打ちますか?フォアハンドでクロスに打つ?それともバックハンドでラインぎりぎりを狙う?それともドロップショットにする?ワーキングメモリは、さまざま選択肢を示し、あなたが対戦愛との動きを注視しているあいだに、最高のショットを選ばせようとします。こうした情報をワーキングメモリがすばやく処理できるほど、ショットの決まる確率は高くなります。

物事のすべてをワーキングメモリのせいにしてはいけない

ここで紹介したように、ワーキングメモリは、この世に生まれた瞬間から死ぬまで、日々の生活で重要な役割をしています。だからといって、これらのことすべてがワーキングメモリのせいにしてはいけません。個人の性格や経験、考え方などによっても物事の捉え方や状況は変わります。ここで、しっかりとお伝えししたかったことは、自分での何かの判断を下したり、選択をしたり、意思をもったりする際に、ワーキングメモリが深く関わっていることなのです。

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